〜ペットショップ・オブ・ホラーズ舞台写真*エピローグ*〜

Epirogue 〜D〜



「私たちはただここで、
見えないものたちの姿を描き、
聞こえない歌をうたい、
失ったものの重みを
この手に乗せている」



「忘れませんよ…
必ず人間に復讐すると、
誓ったこと…」

Dが大きな鞄を手に、
消えていく。
ペットショップに
レオンとクリスが来ると、
Dの姿がなくなっていた。
ポンもトッちゃんもいない。

「どこ行ったんだろう…」

そこに、「D」
が現れる。

姿形はどこも変わらない。
しかし、何かが違っていた。
現れた「D」は、Dの父親、と名乗った。
「不老不死…!?
お前ら化け物か…」

「D」が不遜に笑う。
「化け物…。人間の悪い癖だ。すぐに
自分たちの知識の中に世界を
押し込めようとする…」

「D」は、人間に対して憎しみを
隠さなかった。

Dはまだ近くにいるはず、
と彼は告げ、姿を消す。
街を走りぬけ、Dを見つけた
レオンとクリス。

Dがつぶやく。
「もう、言葉を交わすことはないと
思っていたのに…」

レオンがDに問う。
「お前らいったい何者だ!?」
Dが語りだす。

「私たちの遺伝子は、他人のそれと
混じる事なく親から子に受け継がれます。
…あの記憶を忘れない為に。
その運命を、必ず遂行するために…」

「D伯爵」の遺伝子に伝わる、
悲しい記憶。

”D”は人間を愛してはいけない。
…赦してはいけない。
かつては人間だったDの祖先。
しかし、動物の言葉を聞くことが
できた為、人間に追われ、狩られ、
大地に還ろうとした…その時、
運命が課せられたのだ。

人間に滅ぼされた生物たちの声が
響きわたる。

「私たちの痛みを、苦しみを、
来世に伝えておくれ。
私たちを滅ぼしたヒトに、
復讐しておくれ…」


「私たちはただここで、見えないものたちの姿を描き、
聞こえない歌をうたい、失ったものの重みを、この手に乗せている…、
そういう生き物です」


「二人の前から去ろうとしたDの腕を掴む
レオン。
Dの手から鞄が落ちる。

「…私たちは人間の決めた国境を越え、
どこへでも飛べる。
でも、ヒトにはまだその翼は
与えられていません。
あなたたちは、
ここまでです…」
ポンが、トッちゃんが、
レオンとクリスに
別れを告げる。

そして、
Dが光の中に消えていく―――

Dがいなくなった後に残された鞄。
そこに入っていたのは………。

「…あいつのことだ。
またどっかのチャイナタウンで、
性懲りも泣くまた
ヤバイ商売でもするんだろう…」

二人が微笑みあう。



「…結局あいつは消え、チャイナタウンから
ペットショップは姿を消した。
俺が会ったDという男は何者だったのか。
俺が垣間見た不思議な出来事は何だったのか。
あいつの言う通り、ヒトは知らず知らずのうちに
疑問を抱えながら、
不安な未来に歩みを進めている。
そしてこの星の最後の一人が死に絶えるのを、
Dは微笑みを浮かべながら
見ているのか……」







遠くない未来




二十年後。

再び何処かの街のチャイナタウンで、怪事件が多発する。

「また、原因不明の死体だと!?
被害者はいずれもチャイナタウンのペットショップで動物を
購入しているらしい!!」

「――そのヤマ、僕がいきます!!」


Dが振り返る。
…変わらない姿で。

「いらっしゃいませ。カウントDの
ぺットショップへ、ようこそ」

「FBIのクリストファー・オルコットだ。
僕の兄さんの返しにいった
忘れ物は、届いているだろうか…」

「…ちょうど、おいしいタルトが焼けた
ところです。お茶にでもしましょう…」

Dが微笑む。
―――Dの鞄の中には、クリスが描いた
絵が入っていた―――



END




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