〜ペットショップ・オブ・ホラーズ舞台写真*第2話*〜




第2話 Dry my heart



「親はやった!
ガキがいたはずだが…」
「雨雲が近いな。
奴らは人を食う。
気をつけろ!」


追われる一人の少年が
うずくまり、震える。
「あなたも、一人ぼっちなのね」

少女が現れ、少年の手を引く。
「これから私はあなたのおねえちゃんよ。
わかった?」

「おねえ…ちゃん?」

少年と少女の逃避行が始まった。



雨が降りだした。



近頃多発する失踪事件。
現場に動物のものと思われる爪あとが
見つかったのを理由に、
レオンがペットショップに現れる。

「刑事さん、この世界には人間を食う動物も
いるといいます。もしかしたら…」
「何だと!」
「残念ながら、当店にはそのような
動物はいません。残念ながら…」

レオンをあしらうD。
数日後、ペットショップに
奇妙な客が訪れる。

「おねえちゃん…?いや、違う!」

ポンを拘束する少年、トーマス。
「こいつを食わせろ!」

トーマスを見つめ、不敵に微笑むD。
「わかりました。
あなたさまにポンちゃんを
おゆずりしましょう。
あなたの望みが叶うことでしょう」
トーマスは失踪事件の重要参考人だった。
レオンが現れ、トーマスに銃を向ける。

トーマスとポンを逃がすD。

「落ち着いてください、刑事さん」
「これが落ち着いていられるか!」
犯人を目の前にして逃がしたんだぞ!」

「彼は、帰ってきますよ。
さ、お茶にでもしましょう…」
トーマスが過去の夢を見ている。

人間が食べたい衝動に駆られ、
苦しむトーマス。

「俺は、人間が食いたいんだ!」
「そんなに人間が食べたいのなら、
私を食べればいいわ」
「どうして」
「私はあなたのおねえちゃんだから…」
夢から覚めると、そこには
「おねえちゃん」と瓜二つのポンがいた。

「おねえちゃん」と同じ顔の
ポンを前にして、同様するトーマス。

「伯爵が言ってたわ。クライアントとペットは
惹かれあう。何か意味があるの。
私の姿がおねえちゃんに見えたなら、
そこに何か意味があるのよ」
ペットショップの中を落ち着きなく
うろつくレオン。

「少し落ち着いてください、刑事さん」
「これが落ち着いていられるか!
俺はここにじっとしてていいのか?
すぐにでも追うべきじゃなかったのか!?」
「優柔不断」

「なんだと!」

「私の言うことなんか信じていなければ、
すぐにでも走っていけたでしょうに…
…気になりますか?私のこと v」
「ぶっ殺すぞ!」

Dがレオンをからかう。
トーマスがペットショップに帰ってくる。

「俺には食いたい衝動があるんだ…」
「心配ありません。収めることは出来ますよ」

Dがトーマスの「正体」に訴えかける。
彼は「アメヨビ」という、太古の生物の末裔だった。

「俺は、寂しいんだ…」

仲間や家族を亡くし、孤独を感じると
雨雲を呼び、飢餓感に襲われる
伝説の動物、「アメヨビ」。
トーマスがレオンに言う。
「俺を撃ってくれ!でないと食っちまいそうだ…」

その時、ポンと「おねえちゃん」がリンクする。
「安心して。あなたは一人じゃないから」

「俺は一人じゃないのか!?」
「ええ、こちらへいらしてくだされば」
「…俺は、見つけられるかな…」
「もちろん」

Dがトーマスを誘惑する。
トーマスの精神世界がひろがる。

トーマスと「おねえちゃん」が
一緒に過ごしていたころの、
過去の思い出。

「おねえちゃん」がトーマスに別れを告げる。

「私、死ぬの」
「え…」
「死んでも、私はあなたのおねえちゃんよ…」
「食べないで。
あなたは、一人じゃないから…」

「おねえちゃん」が、遺言を遺し、
トーマスの前から去っていく。

……永遠の別れ。

雨が降りだす。
Dが現れる。

「雨雲はいつか晴れます。その向こうには、
必ず温かい光を湛えた太陽があります…」
「そうだといいな」
「行きましょう」

「おやすみ…おねえちゃん…」
数日後。
レオンがペットショップに現れ、
拘置所に入ったはずのトーマスが
いつの間にか消えていたことを告げる。

「アメヨビ」と「人間」の過去をレオンに語るD。

「アメヨビ」は太古の昔人間を愛し、
共存していた生き物なのだ、と。

人間に化け、雨雲を呼ぶことから
人間に疎まれ、滅ぼされても、遺伝子に記憶は残る。
人間を愛していた記憶が遺伝子に
残り、彼らは人間を「食いたく」
なる衝動として求めてしまうのだ。
不遜な態度の少年がレオンを押しのける。

「なんだこりゃ。…犬?なんだ?」
「当店のニューフェイス、トッちゃんです v
気をつけてください。食べられる…
いえ、かじられるかもしれませんよ」

トーマスが人間に化けることをやめ、
「トーマス」として生きた過去を捨て、
「アメヨビ」本来の姿になったのだ。

「上等だよ!人間様をなめんなっつうんだ!」

レオンとトッちゃんがじゃれあう。
レオンとトッちゃんの姿を横目に、Dがつぶやく。

「新しい時代、彼らは過去の悲しみを忘れ、
また互いに愛し合うことが出来るように
なるのでしょうか。……私は…」


「ねえねえ伯爵!チョコやクッキーは私を
愛してくれてるかしら!」
「…ど、どうでしょうねえ…」
「さて、ひさしぶりのお天気ですから、
外でおやつにしましょうか」

レオンを残し、三人が店を後にする。



外では長く続いた雨がやんでいた。
一人の少年の渇いた心が、
救われたのだ。



雨が、やんだ。




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